ノスタルジア
雪のない世界と洗練された空気に憧れて都会に出た。
もう、大分昔の話である。
上京してまもなく、ホームシックにかかった。いわゆる五月病である。
黄昏どき薄暮の時間帯になると物悲しくて仕方がなかった。時には涙がこぼれてくることさえあった。
四方を山に囲まれた故郷の風景、畑の中で一服する祖父の姿。
思い出すのは、時間軸の緩やかな故郷の光景ばかり。
不思議だった。
目の前には、颯爽とそびえ立つ高層ビル、スーツ姿のサラリーマン、ハイヒールを履いて街を闊歩する女性たち。
どれも憧れた都会ではないか。
それなのに、もうそんな憧れはどうでもよかった。とにかく、故郷に戻りたくて仕方がなかった。家族が恋しかった。
郷愁は変わらなかったけれど、若い感性は、すぐに都会に慣れ、青春を謳歌した。
もうすぐ、帰省ラッシュが始まる。
それぞれの思いを胸に"ああ上野駅"
Written by R
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